放火魔事件

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はーい!シゲちゃんでーす。

 今日は、お世話になっている米沢警察署さんに通報されちゃったお話でーす。もちろん誤解です。誤解だったんすよ。私は無実でーす。でも実話です。

 16年ほど前のそれはそれは寒い1月下旬の深夜のことでした。土曜日ということもあり、私は友人3人と居酒屋(今はなき白木屋)で酒を飲んでいた。パソコンの2000年問題が何もなかった話題などで盛り上がり、気がつけば時間は深夜1時をまわっていた。その冬の積雪量は比較的少なかったのでタクシーが来るまでそれほど時間はかからなかった。すぐに車が来て友人と別れて自宅へ向かった。

タクシーを降りて自宅に着いた。家に入ろうとすると鍵がかかっている。

しまった!鍵を忘れた。鍵は自分の部屋の枕元だろう。仕方なくケータイで電話することに。

ところが、こんな時に電池切れ・・。なんてこったいと思いながら何度かやってみたが遂にはダウンしてしまった。やばい!どうしよう。

そーだ!その日の夕方一度帰宅して風呂に入った。多分自分が最後に入ったはず。とすれば風呂場の窓の鍵は開いているはずだ。家の横から風呂場のある窓へ。やった!開いてる!

もう察しのいい貴兄ならこの辺で先の展開を想像できるだろう。
そうだ!風呂場の窓から家に入ろうとしたのだ。

窓の下に向かい、手で窓を開けようとした。

ところが・・開かない・・。

1月下旬の深夜である。無情にも風呂場の窓は凍っていた。

そーだ!

私はジッポのライターを取り出し着火。窓のレール部分をあぶるようにした。手でなでながら。おぉ溶けるぞ。だが思うように開かない。ま、こすってればそのうち開くだろう。暗闇にゆれる赤い火がまぶしい。酔った上にそれに集中していた私は、それが世間から見てどれだけ異様な光景かを思う余裕はなかった。

シゲ「あけーあいてチョウダイ!」


その時だ。車のエンジン音がしてこちらに向かってきた。数人が車から降りてこちらに向かってくる。

警官A「ちょっとあなた。そこで何してるんですか?」 
シ ゲ「え?はい、窓が開かなくて・・って、ええっ!?」

振り返ると私の家の前にパトカーが2台。1台はパトライトを点灯、もう1台は点灯なし。警官が3名ほどこちらの様子をうかがっている。パトカーにはもうひとり、運転席でこちらをじっと見ている。

警官A「ちょっとこっちへ来て。話を聞きましょう。」
警官B「この近所から通報あったんでね。」
シ ゲ「通報?なんでですか?」
警官B「なんでってあなた。この状況どう思う?」
シ ゲ「あぁ、そうですね。でもここ自宅ですよ、私の。」
警官A「とにかくはやくこっち来てください。」
警官C「抵抗しないでね。深夜だし。」

抵抗?なんだそれと思いながら私はパトカーの後部座席へ。近所の何件かの灯がついている。これは・・まずい。なんでこうなるの?

パトカーの中で事情聴取を受けた。
なりゆきを話すと、

警官B「もう一度聞きますが、内容にウソはないですね?」
シ ゲ「もちろんすよ。こんなこと冗談でも言えないすよ。」
警官C「でも身分証明はできないし、それにあなた酒臭いよ。」
シ ゲ「だから酒は飲んできたっていったでしょ?」
警官B「とりあえず署で話しよう。深夜だし。」
シ ゲ「え?今からすか?もう2時過ぎてますよ。」
警官C「あなたねぇ。放火魔の容疑かかってんだよ!」
シ ゲ「ほ、放火魔・・?そんな・・・。」
警官A「ええ午前2時5分。現地で容疑者確保。」

私を乗せたパトカーは、静かに深夜の住宅地を離れたのだった。


警察署で再び事情聴取された。同じことを別々の警察官に3回も聞かれた。当然ながら酔いはすっかり醒(さ)めていた。蛍光灯の灯が目に痛い。


時間は午前3時25分だった。

若い警察官に案内されて父が聴取室に入ってきた。

父「すいません。ご迷惑かけます。どうも・・。」

警官B「あ、ご苦労様です。深夜に申し訳ないですねえ。」
警官A「早速ですが、こちらは息子さんに間違いありませんか?」
父「はい、間違いないです。でもどうして・・。」
警官B「お父さん、今日はおそいですから詳しくはご本人に聞いてください。では書類書いていただきます。身分証と印鑑持ってきていただきましたね?すぐ終わりますからお願いしますね。でも良かったですよ。」
父「はい。申し訳ありません。」

父はちらりとこちらを見てにらんだ、ように見えた。

ようやく開放された。外の空気が冷たかった。

警官ふたりに見送られて私は父の運転する車に乗った。
時間は3時55分だった。目の前のデジタル時間表示が青く光っていた。

シゲ「あの・・ごめん。でも・・。」
父「何時だと思ってる。今日はいいから寝ろ。」
シゲ「・・・。」

自宅に戻ると嫁も起きていた。父は無言で部屋に戻っていった。

翌日、家族から責められたのは言うまでもない。

町内では噂になったらしく、後に花見の席で説明することになる。
私にとって忘れられない痛い経験となった。

しかし、通報したのが誰なのか、いまだに謎である。

ではまた。

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