レストラン「カプリ」(2)

pizza.jpg

はーい!シゲちゃんでーす。

 なんだか小雨まじりでパッとしない天気っすねえ。しかも徐々に湿度が上がってきてます。朝だというのに部屋の湿度は70%を超えてるっすよ。いよいよジメジメの季節っすねえ。「ゆず庵」さんは6月30日オープンみたいす。金池の店の前通ったら6月30日って出てたすよ。さて、今日はレストランのバイトの話なんすけど、またシリーズになりそうな予感っす。

◎ 初めての料理

 五日市街道沿いにあるイタリアンのお店「カプリ」。店の規模はガスト米沢店ぐらいだったすかね。店の中央には円形のカウンターが大きく陣取り、上に目をやるとやはり円形のレールがある。そこをイタリアから取り寄せたという機関車がゆっくりと周っている。各コーナー毎に壁に埋めこみ式のテレビが10箇所置いてある。そこに当時出はじめだったMTVのPV(プロモーションビデオ)が流れている。

 店の雰囲気からか若いサラリーマンやカップルが多かった。最初にフロアの仕事を希望したのは、まるで燕尾服のようなスマートな制服が理由だった。初めて来店したとき、田舎と違ってお洒落だと実感していた。でも実際に指示されたのは厨房の仕事。なんだ裏方かと残念な気持ちでさえあった。

 若い職場だった。この店全体では25名ぐらいのスタッフだが、厨房では8人の先輩料理人がローテーションを組んで出ている。一番上の人でも34~35才で、他は皆20代そこそこだ。意外に体育会系で厳しかった。

 さて、私は毎夜皿洗いと掃除をさせられ、まさにコマネズミのように厨房を行ったり来たりしていた。今夜は総料理長が来る日だ。月曜の夜ということもあって客は少なかった。皿洗いを一段落した私に先輩が話しかけた。

先輩A「おい、今日は料理長おでましだぞ。きれいにしとけよ。」
シ ゲ「そうすね。今日は客も少なめだし、教えてもらえそうす。」
先輩B「ところでさ、おまえ、米とげる?」
シ ゲ「はぁ、学生寮の寮母さんに教えてもらったっすけど、自信ないっす。」

先輩B「ピラフとかだとさ、フツーの飯とはチッと違うんだよな。」
先輩A「こいつは、まずその辺からなんじゃないすかね?」
シ ゲ「なんでもいいすよ。もう手がふやけちゃって。」
先輩B「ま、皿洗いにもコツがあってさ。オレもかなりやらされたわ。」
先輩A「ほらな、おまえあと半年皿洗いしとけや。」

そうこう言っていると、フロアのほうから、「お疲れ様っす!」と数名の声が聞こえた。料理長だ!もうワクワクしていた。今日は頑張るぞ!

 料理長はかっこいい。まるで俳優のようにヒゲをたくわえ、目は笑っているが眼光鋭い。しかも背が高い。それでいて40そこそこで料理長。私は始めて見たときからファンになっていた。本当にカッコよかったのだ。

takenouchi.jpg
イメージ的には、竹野内豊さんす。彼を見ると料理長を思い出すぐらい似てたっすよ。

料理長「はい、ご苦労さん。今日はヒマ・・かな?」
先輩C「お疲れ様です。そうですね、月曜で雨も降ってますから。」
料理長「今、売り上げ見てきたけど土曜日は繁盛したようだね。」
先輩B「はい。もう戦争状態でしたよ。な?」
先輩A「もうオーダーの嵐っした。でも手は抜きません。」

料理長「そうか、まだ開店して2年目だし、ここが正念場だぞ。皆頼むぞ。」
先輩C「はいっ!しっかりやらさせていただきます。」
料理長「おぉ、キミも頑張ってくれたか?」
シ ゲ「はいっ!皿洗いのプロ目指してます!」
先輩A「おまえ、あんだけ嫌がってただろ。調子のいいやつ。」

皆、いつもはこわい顔をしているが、料理長が来るとなぜか笑顔になる。料理長はそんな雰囲気を持っている人だった。

 さて今日期待していたのは、皿洗いから脱皮して料理を教えてもらえるという約束だった。私から切り出していいものか、忙しい料理長だ。もしかすると忘れているかもしれない。ま、次回があるから期待しないでおこうと思い始めていた。

料理長「さて、キミと約束したことだが、今日大丈夫か?」
シ ゲ「え?あ、はいっ!お願いします。」
料理長「ズンドー持ってきてくれ。あと材料はB君、用意してくれてた?」
先輩B「はい、ベシャメルソースですよね。用意してます。」
料理長「配合はB君に教わってくれるか?」
先輩B「おい、よかったな。始めるぞ。」
シ ゲ「はい、でも僕は何すれば?」

料理長「ベシャメルは基本中の基本だ。よく見て覚えて欲しい。」
先輩A「今日はオレがやるから手順とかよーく覚えておけよ。」
シ ゲ「はい、メモとか・・。」
料理長「レシピも大事だが実際の手順をみるんだ。メモはレシピノートに書いてある。」
シ ゲ「はいっ。」
料理長「退屈な作業だが、ここにいるスタッフは皆これをやってきているんだ。」
シ ゲ「はいっ!」
 
 ベシャメルって何だ?でも料理長は忘れないでいてくれた。うれしかった。少しも聞き漏らすまい。全部ビデオのように目に焼き付けよう。そんな想いで先輩の様子を見ていた。何か始まりそうな期待でいっぱいだった。


今日はこの辺で。おぉ、時間がない。遅刻しそうなので、続きは次回っす。

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック