私オカマでした(13)

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はーい!シゲちゃんでーす。

 なんだか曇り空で蒸し暑いっすよねえ。朝から湿度70%超えてます。さて本日は「私オカマでした」その13話目っす。前回登場したマツコさん似の京香ママが変なお客さんを紹介してくれました。

■ 不動産屋社長 鈴木さん

 新宿ゴールデン街の一角にある小さなオネエ系のお店「ナイトビーンズ」。今日は正式のバイトとしての初日。こないだまで赤の他人だった人々と今こうして話している。人生は出会いだよなあとつくずく思うのだった。オカマ組合の組合長という京香ママの登場もインパクト十分な出会いだった。

 前回と同じくゴルゴさんとジェイソンさんはカウンターでグラスを磨き始めた。ママから厨房をまかされた私は冷蔵庫を物色して本日のメニューを考えていた。京香ママはママと話し終えるとそそくさと自分の店に戻っていった。強い香水の香りが残っている。残り香というには強烈な香りだ。

ママ「オニイチャン、開店までもう少しあるから休んでていいよ。」
シゲ「ええ、いつでもできるように段取り考えてるんす。」
ママ「今から動いてると疲れちゃうしさ。座んなさいよ。」
シゲ「あ、そーすね。夜は長いっすからねえ。」

ゴルゴ「はい、オシボリ準備完了よ。オニイチャン、ビール冷えてるぅ?」
シゲ「はい、20本冷え冷えっす。いつでもスタンバイOKっすよ。」
ゴルゴ「のど乾いちゃって、早くお客さん来て欲しいわぁ。」
ジェイソン「ゴルゴちゃんビール飲みすぎるとお腹出てくるよぉ。」

ゴルゴ「あら、もうとっくに出てるわよ。こないだもお客さんにいわれた。」
ジェイソン「京香ママに比べたらどってことないけどね。」
ママ「ジェイ子ちゃん悪口はダメよ。後で京香来るんだからね。」
ジェイソン「あらそうなの?噂をすればっていうからねぇ。」

 お店の開店時間は午後8時。今日も日中は異様な暑さだった。エアコンの冷気が心地よい。エアコンの送風口にココナッツの香りの小瓶が付けてある。お店に売りに来たお兄さんから買ったものだそうで、送風が始まると香りが漂い始める。最初は異様に感じたが今は逆にいい香りに思える。

「カランカラーン」

店のドアの鈴が鳴った。

ゴルゴ・ジェイソンさん「いらっしゃいませぇ。」

カウンターからジェイソンさんが立ち上がってお出迎えに向かった。

 そこにはスーツ姿の年配の小柄な男性が立っていた。この暑い日に三つ揃えの高級そうな黒のスーツに帽子をかぶっている。丸い黒縁めがねが印象的でまるでチャップリンのようないでたちだ。

お客「あっ、あのー、京香さんの紹介で来てたんだけど・・。」
ママ「あらそうですか、いらっしゃいませ。さ、どうぞどうぞ。」

その男性はなかなか中に入ってこない。ジェイソンさんが腕を組んで中に誘ってようやく足を進めた。男性ひとりのようなのでカウンター席を案内されて腰を下ろした。

お客「いや、ボクねえ。鈴木といいまして不動産屋してます。」
ママ「どうもご丁寧に。私ママのミヨと申します。ご贔屓(ひいき)に。」
お客「いやぁ、ボク、こういう店ははじめてでねえ。」
ママ「あら?京香さんにいらしたんでしょ?」

お客「そうなんですが、なんでも用事があって店を出るからってここを紹介されたんです。」
ママ「あぁそうか、集金ね、今あの店の女の子が休んでましてね、そっかそっか。」
お客「あの、一度来てみたくてね。こんな老人で申し訳ないんだけど。」
ママ「いえいえどなた様も大切なお客様です。楽しんでいらしてくださいね。」

お客「ああ良かった。断られるのかと思ってましたよ。」
ママ「そんなことありませんよ。先にお飲み物どうなさいます?」
お客「ああビールありますか?」
ママ「オニイチャン、ビール1本ね。」
シゲ「はい、ただいま。」

のどが渇いていたゴルゴさんは、すかさず冷えたオシボリを手渡すとニコリと微笑んで、客に話しかけた。

ゴルゴ「はじめまして、ゴルゴと申します。暑かったですからねぇ。のど乾きますよね。」

お客「あの、よければ記念に乾杯しましょう。」
ママ「よろしいんですか?じゃあお言葉に甘えて。ビール2本ねぇ。」
シゲ「はーい。あ、ようこそいらっしゃいませ。」

 厨房にいた私は、ビンを拭いてトレイにのせてカウンターに運んだ。鈴木さんという客は何か落ち着かない様子で店内を眺めていた。照れているのかゴルゴさんやジェイソンさんには目を向けない。私がビールの栓を抜いて差し出すと、ふと私を見て怪訝(けげん)な顔をした。

お客「あなたは化粧してないんだね。」
シゲ「はい、ボクは厨房の手伝いしてまして、実は今日が初日なんです。」
お客「ほう、じゃあボクと一緒だ。あなたも乾杯しようか。」
シゲ「いえ、ボクは・・。」
ママ「お客さんのご好意よ、一緒に乾杯しましょ。」

「カンパーイ!!」

 今日ひとり目のお客さんの鈴木さんという人。後にこの店の常連のひとりとなるのだが、バブル景気で一躍金まわりが良くなる。そして私たちにとっての強力な援護者になる。京香ママが逃がした魚は大きかったかもしれない。人生にはこんなことがたまにあるようだ。

今日はここまでっす。
ではまた。

→ 私オカマでした(14)

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