私オカマでした(14)

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はーい!シゲちゃんでーす。

 もうすぐお盆すね。蒸し暑い日が続きますがご自愛ください。鶴岡東、残念ながら初戦敗退でした。でもいい試合したっすね。関係者の皆様お疲れ様でした。やはり全国区となると投手陣も打撃陣もレベル高いっすねえ。私の若い頃に比べたら山形県勢もレベルアップしたのは間違いないっすよ。今後も応援します。

 さて、久々に「私オカマでした」の14回目。この話、一ヶ月も更新してなかったっす。月日の経つのは本当に早いものっす。ではでは14回目の始まりっす。

■ 知らなかった、ママの過去

 秋風が吹き始めていた。あれ程暑かった夏も、神無月(10月)の声を聞いて居残るのをあきらめたかのようだ。 新宿ゴールデン街の一角にある小さなオネエ系のお店「ナイトビーンズ」。最初のアルバイトの晩から2週間が過ぎていた。私は週末だけの厨房(ちゅうぼう)スタッフとして働くことになった。

 ジーンズにスニーカー、白のTシャツにエプロンとママからもらった赤のバンダナ。それがボクの店でのユニフォーム。得意料理は、バゲットサンドとピラフにパスタ料理。すべて別のバイト先からの受け売りメニュー。それでも店での反応は上々だった。当時は東京の新宿でもその手の店は少なくて珍しさも手伝って店には女子の姿も目立ってきた。お目当てはオカマプラスバゲットサンド。持ち帰りたい人まで出る人気だった。

 10月18日土曜日。私はナイトビーンズにいた。今日で三回目のお仕事だった。時間は7時10分。そろそろゴルゴさんたちも出勤してくる。私は仕込みをしながらカウンターでタバコを吸うママと会話をしていた。3回目ともなると厨房の使い勝手もわかってくる。当初よりもきれいな厨房だ。先週帰った時よりなんとなく磨かれている。きっとママがやっているのだろう。ママの性格なんだろう。

ママ「オニイチャンさ、なんとかサンド、大好評ね。」
シゲ「おかげさまで。こんなに喜んでもらえるなんて思わなかったっす。」
ママ「学校はちゃんと行ってるの?」
シゲ「え?はぁ、まあ大丈夫っすよ。」
ママ「ご両親に恨まれたりしないかしら。」
シゲ「両親には言ってませんし、たぶん言っても無反応でしょ。」

ママ「そんなことないよ。親って子供で生きてるとこあるからさ。」
シゲ「子供で生きてる?んすか?」
ママ「そーよ。私にも子供いるからわかるの。」
シゲ「へぇ、ママが産んだ・・とか?」
ママ「あなた・・バカねぇ。そんなわけないでしょ。」

シゲ「でも・・。」
ママ「私ね、これでも昔、普通の女性と結婚した男の子の親なのよ。」
シゲ「へぇー、それは知らなかった。」
ママ「でもね。離婚したの。脱サラしてこの店始めたら「ついていけません。」って。」
シゲ「じゃ今は、その男の子と同居なんすか?」
ママ「いーえ、あの女が連れていっちゃった。今は静岡の浜松にいるの。」

シゲ「何歳なんすか?子供さん。」
ママ「今年小学校四年生。前の奥さんが毎年写真送ってくれる。」
シゲ「へぇ、辛いっすねぇ。ママも苦労してるんすね。」
ママ「私がいけないの。全部私の責任。自業自得よね。」

シゲ「・・・。」
ママ「あら・・。ごめんね、変な話になっちゃった。」

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シゲ「いえ、あの、その、前は何やってらっしゃったんすか、仕事。」
ママ「土建屋。ビル建てる会社の現場監督。ヘルメットかぶってね。」
シゲ「ええーっ!見えないっす、全然想像できない。」
ママ「そりゃそーよ。化粧してる現場監督見たことある?」
シゲ「いませんね、そんな監督いやだ。」

ママ「北海道の留萌(るもい)って町の工業高校出て東京に来たの。」
シゲ「留萌?どの辺すかね?」
ママ「札幌から北海道の左側を北に行くの。その途中あたりかな。」
シゲ「地元が嫌いだったんすか?」
ママ「漁師町でさ、兄貴も妹の亭主も漁師。ずーっと帰ってこないの。」
シゲ「大変すね。」

ママ「でも私はそれがいやで水産高校じゃない工業高校に入ったの。それで地元の会社入ったんだけど仕事も給料もなくてね。地元の職安行ったら東京なら給料もいいしってことで出てきたわけよ。右も左もわかんなかったんだけどね。東京の建設会社の社長がいい人で資格とれって学校に通わせてくれた。測量や設計、建設の基礎も勉強した。もう必死だったわよ。」

シゲ「がんばったんすねえ。で、現場監督に?」
ママ「そうね、入社して6年目で初めて任されたの。JVっていって3社合同のビル建設。」
シゲ「すげー。何階建てすか?」
ママ「高島平の8階建てのマンション。毎日同僚と飲み会よ。」
シゲ「そーなんすか。いや、まだ想像つかないっす。」

ママ「そこで会ったの。別れた妻と。」
シゲ「あぁ、なるほど。それで。」
ママ「一目ぼれってやつね。お互いに・・かな?」
シゲ「おぉ、もっと詳しく。」

ママ「あんた聞き上手ね。この仕事向いてるわよ。」
シゲ「だってもっと聞きたいっすもん。」
ママ「酔っ払った私たち三人をいつも介抱してくれた。」
シゲ「それで酔った勢いで・・。」

ママ「ちがうわよ。いつも二次会でいく場末のスナックでね。静岡から半年前に出てきたとかでさ。昼は工場で夜は店でバイトしてるっていうの。浅田美代子になんとなく似てるのよ。私はこの女しかいないって思ってね。ある晩思い切ってデートに誘ったの。2回断られた。でも負けじと3回目。」

シゲ「おぉ三度目の正直?それとも二度あることは?」

ママ「OKだった。うれしかったなぁ。」
シゲ「おぉやたー。で直行?」
ママ「バカ、誰が始めてのデートでホテルいくのよ。映画みて食事して家まで送った。」
シゲ「青春してたんすねえ。胸がきゅんきゅんっす。」

ママ「で、1年後に求婚して半年後に結婚。毎晩飲んでたから。お金なくてさ。」
シゲ「通ったんでしょ、彼女の店に。」
ママ「それもある。結局彼女の家からお金借りてやっとこさ結婚式。」
シゲ「良かったじゃないすか。夢を実現したんすから。最高でしょ。」

ママ「小さなアパート借りてしばらくは平穏だった。で、子供ができてね。フツーのよくある家庭よ。私もお酒はやめて仕事に没頭してた。毎日同じ繰り返し。ほんと繰り返し。でも海水浴や花火大会や学校の運動会にも一緒にいったんだよ。それが唯一の楽しみっていうか。あのまま我慢してればねえ。」

シゲ「何があったんすか?」


カランカラーン

ドアの鈴の音が鳴ってゴルゴさんとジェイソンさんが出勤してきた。

ゴルゴさん「あらぁ、オニイチャン、おひさ~。」
ジェイソンさん「今日はもうけたわよぉ、ほら!おみやげチョコレート。」

ママ「あらこんな時間ね。オニイチャン続きはまた今度ね。はいお仕事よぉ。」
シゲ「はいー楽しみにしてます。」

ジェイソンさん「なになにー、内緒話なのーアタシも混ぜてぇ。」
ママ「なんでもないの。昔話よ。さあ今日も稼ぎましょう!」
ゴルゴさん・ジェイソンさん「おぉおお!!」

 意外すぎて思わず聞き入ってしまった。ママの過去を少し覗き見した。この人にもそんな過去があるんだ。それにしても華麗なる転身といっていいだろう。建設会社の現場監督からオカマの店のママ。人生って面白いなあと思ったひと時だった。

今日はここまで。ではまた。

→ 私オカマでした(15)

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