私オカマでした(17)

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はーい!シゲちゃんでーす。

10月も後半にきたっすね。ウチは小型のファンヒーターを出しました。朝夕だけ使ってます。まだ日中は暖かいんすけどね。お湯のない生活二日目っす。やはり辛いすね。やっと明日修理の人が来てくれるそうです。またお金かかるんだろうけど背に腹は変えられないつうとこっすね。さて、「私オカマでした」の17話目っすよ。

テレビが来る!(2)

カランカラーン・・ドアが開いた。

取材A「こんばんわぁ、お久しぶりですぅ。」
ママ「あら、いらっしゃいませ。よろしくお願いします。」
取材B「ママ、今ウチのディレクターと監督はいりますので。」
ママ「はい、汚いとこですけど、よろしくお願いします。」

鈴木「鈴木です。先ほどはどうも。どうぞお入りください。」
ゴルゴ・ジェイソン「いらっしゃいましぃ。」

 いよいよテレビ朝日「トゥナイト」の取材がはじまる。ママがドアを広く開けるとスタッフらしき人達がぞろぞろと入ってきた。全部で7名ぐらいいるだろう。カメラを右肩に乗せたヒゲのおじさんが業界人っぽくてかっこいい。紺色のジャケットを着た人がディレクターらしい。日焼けした背の高い人でニコニコしている。

取材D(デイレクター)「はじめまして。ロケやらせてもらいます。田辺と言います。」
ママ「あら、すいません。名刺今持ってきます。」

ディレクターさんが名刺を差し出したので、ママは慌ててカウンターに名刺を取りにきた。

ママ「オニイチャン、どーしよう、私こーゆーの初めてでさぁ、どーしよう。」
シゲ「普段どおりって言ってたじゃないすか、大丈夫っすよ。さあ笑顔で。」
ママ「フォローお願いねぇ。」
シゲ「はい、大丈夫。がんばって!」
ママ「じゃあ行くわね。」

ママはそわそわと出て行き取材Dにペコペコしながら名刺を渡した。

取材B「はい、山本監督現場入りでーす!」
取材A「はい、カントクはいりまーす。」

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山本晋也監督だ。私もひとめカントクの顔を見ようとカウンターから身を乗り出した。すると、キャップをかぶった小柄な人が入ってきた。小さくて驚いた。取材Dと話をしている、打ち合わせだろう。もしかして怖い人かな?いつものサングラスをしていないし、笑ってもいない。アドルフ・ヒトラーのようなちょび髭は見えた。

カントク「はい、すいません。山本です、今日はよろしくお願いします。」
左手を軽く上げたあと深々と頭を下げた。

ママ「はい、お願いします。」
京香ママ・ゴルゴ・ジェイソン・シゲ「お願いしまーす。」
カントク「えーと・・ママはあなたかな?」
京香「はい、あ、いえ。ミヨちゃん、何してんの、こっちきて!」

ママ「どうも、はじめまして、こんばんわ。ここでいいですか?」
カントク「あははは、ママ緊張してるね。まだカメラまわしてないから」
ママ「あらそうなんですか?なんだかわからなくて。」
カントク「あの大きいのがキューって言ったらはじまりですよ。」

取材D「キューって言いますから。」
カントク「なんだか、皆さん緊張してるからちょっとほぐしましょう。」

監督の手拍子を合図にスタッフが手拍子を打ち始めた。
カントク「はいっ!ぼーくらはミンナいーきているぅ・・」
取材スタッフ「いきーているからたのしんだぁ・・」
カントク「はい、全員で歌いましょう!」

ママ「なに?これ?」
京香「リラックスしようってことよ、ほら一緒に歌お、あんたたちもよ。」
ゴルゴ「ぼーくらはみんなぁ・・」
ジェイソン「いーきているぅ・・」
ママ・シゲ「いきーているからかなしんだぁ・・」

カントク「手ぇのひらをぉ太陽にすかしてみればぁ」
スタッフ「まーっかぁにぃ流れるぅ僕のちしおー」

スタッフ全員が手を上に上げる。私たちも万歳した格好で歌った。

全員「オケラだーってカエルだーってぇアメンボだーってぇー、生きて生きて生きているんだトモダチなぁんだぁあ・・」

歌い終わってカントクが、「はい!みんなで深呼吸!スーハースーハー」

パチパチパチパチ、拍手が鳴った。みんな笑顔になっていた。私も店のみんなも驚いた。カントクってこんな気配りする人だったんだ。その後カントクはサングラスをしていつもの笑顔に戻った。そして撮影取材が始まった。

取材D「はいっ、アタマカットいきまーす。はい、キューっ!」

カンパーイ!

ボックスでカントクとママと鈴木さん、客に扮した若手スタッフも混じって乾杯、私が気合を入れて作ったサンドも大好評だった。ママは表情が固かったけど徐々に慣れてきたようだ。

ゴルゴさんとジェイソンさん、京香ママはいつも以上にはしゃいでいた。カントクも顔をぐしゃぐしゃにして笑っていた。そして決まり文句も飛び出した。

京香ママとゴルゴさんの胸に顔をはさまれて、

カントク「いやぁ・・もうねぇ・・だめですわ。しかし・・すっごいですねぇ。」

取材D「はいーオッケーでーす。カントク、皆さんお疲れ様でーす。」

最後にカウンターの中で、店のスタッフ、真ん中に山本監督をいれて、
「新宿のナイトビーンズでーっす、きてねー!」と手をふる映像を撮って終了。

何がなんだかわからないまま終了となった。時間はたったの40分ぐらいだったが、半日も経ったような長い時間だった。現場のロケってこんな感じなんだ。山本監督はサングラスをはずして、私たち一人ひとりと握手してくれた。本当に気さくでいいひとだった。先にカントクを送り出し、取材スタッフも各々「お疲れっしたぁ!」と挨拶をして帰っていった。ママたちは見送りに忙しい。

私はボックスを片付けて、厨房にグラスや皿を洗い物を持ち帰った。ホッとした。時計はまだ9時前だった。すごく疲れた。ママたちはもっと疲れているだろう。でも初めてのテレビだ。山形でも放送されるのかな?そう思いながら皿を洗い始めた。続く。

→ 私オカマでした(18)

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