私オカマでした(12)

okama.jpeg

はーい!シゲちゃんでーす。

 米沢は昨日の夕方からシトシト雨が降ってるっす。気温は下がってきたすけど湿度があるんすねえ。若干ベトベト感があるっすよ。明日21日は夏至っすよ。昼の長さが一番長い日つうことっす。つうことは明日がピークで徐々に夜が長くなっていくつうことすね。さて、「私オカマでした」の12回目いきまーす。

■ オカマ組合

 新宿ゴールデン街の一角にある小さなオネエ系のお店「ナイトビーンズ」。先週の土曜日、成り行きで店を手伝うことになった。出した料理が好評だったこともあって週末の手伝いを頼まれたのだった。

 金曜日がやってきた。

 幸せってなんだろう?とよく言われるけど、僕が思うに、誰かに期待されること。誰かのために何かをすること。そして結果喜んでもらえること。これだと思う。人は人とつながって生きているのだ。当時の僕が正にそれだった。だから大学の受講を終えると、もう頭の中は店のことでいっぱいだった。

 週末の中央線東京行きは混んでいた。これからディスコという感じの若者たちが華やかな服装ではしゃいでいる。僕はといえば、いつもの白Tシャツに細身のジーパンとスニーカー。ドアの近くの手すり横に立って夕日を見ていた。今日はどんな人と会えるだろう。

 「新宿~シンジュク~・・。山手線、小田急線、西武線・・・は、お乗換えです。お忘れ物ないようご注意ください。間もなく2番線に高尾行き快速電車がはいりまーす。白線の後ろまで・・。」

 ドアがプシューッと音を立てて開く。大勢の人が怒涛(どとう)のように流れてゆく。あれから一週間が経った。10月に入ったにもかかわらずまだ暑い。人並みであふれる階段を押されるように降りていった。そしてあの店に向かった。

シゲ「こんばんわぁ・・。」
ママ「あら~オニイチャン、おはよ。来てくれたのねぇ。」

午後7時。まだ夕日の気配の残る店でママはタバコをくゆらせていた。

ママ「アンタのなんとかサンドとピラフ、すんごい評判だったわよぉ。」
シゲ「喜んでもらってホント良かったっす。」
ママ「あっ、ドア閉めてくれる?蚊が入ってくるから・・。」
シゲ「はい。」

ママ「今日もできるぅ?材料なかったら買ってきて。お金渡すから。」
シゲ「サンドとピラフなら残り物でもできますよ。」
ママ「助かるわぁ。この店料理はあんまり出せないのよ。」

シゲ「そのうちピザでも作りますか?」
ママ「ここの厨房でもできるのかしら?」
シゲ「えぇ、立派なオーブンがあるすから。」
ママ「あのね。実はアレ使ってないのよ。前にね、トースト焼いたんだけどね。あっという間にまっ黒焦げでさぁ。で、トースター買ったのよぉ。ダメよねぇ。これじゃ彼氏もできないわねぇ。」

シゲ「は、はぁ。」

ママ「あ、掃除は終えたからね。あともうすぐ仲間が来るの、オカマの。」
シゲ「あの、同業者の方ですか?」
ママ「ここのオカマ組合の人でね、町内会長みたいなもんよ。」
シゲ「あったんすね、オカマ組合って・・。」

 その時だった。ドアを開けて太ったオバサンのような人が入ってきた。いまでいえば正にマツコさんだった。派手な化粧に赤と白のムームーを着ている。指には指輪が6個ほど光っている。オカマ組合の組合長らしい。急いできたのか、ハァハァ言いながら店に入ってきた。

matsuko.jpg

京香「おはよっ!暑いわねぇ。キャーこの子ね?そーでしょ?ミヨちゃん。」
ママ「おはよ、そーなのよぉ。あ、ドア閉めてね。蚊が入ってくるから。」
シゲ「はじめまして、シゲです。よろしくっす。」

京香「あら、かわいい。まだ若いのね?おいくつかしら?」
シゲ「19歳です。貧乏学生っす。」
京香「ママ、ダメよ、変なこと教えちゃ。」
ママ「あら何言ってんの?アンタこそやめなさいよ。」
シゲ「・・・。」

 京香さんは同じゴールデン街にある「スナック京香」のママさんだった。月初めにお金を集めて年に2回の旅行にいくのだそうだ。ママたちは従業員の分も負担しているらしい。会社で言えば福利厚生ということになる。でもオカマの団体旅行って少しこわいような。

京香「アンタさぁ、うちにも紹介してくんない?料理できる子。」
シゲ「え?あの、ちょっといないすねえ。」
京香「じゃあアンタ来なさいよ。バイト代出すわよ。」
ママ「ダメよ。当分はウチの専属だからね。ね?オニイチャン。」

 見た目は女性ふたりに取り合いされているようだが、どちらもオッサンである。変な違和感を覚えたが、ふたりとも悪い人には見えないし、顔を見て話せるようになっていた。徐々に慣れてきている自分がいた。

京香「ウチの子ね、ほらぁ、ユミだけどさ。男作ってやめるっていうのよ。」
ママ「ユミちゃんが?へぇ、驚いた。まあオカマにしては上出来なほうだしね。」
京香「そうなのよ。ウチの看板娘じゃないよ。アンタ何とか引き止めてよ。」
ママ「しばらく来るの?」
京香「急じゃ困るからって今月いっぱいは来てもらうわ。」
ママ「じゃあ月曜にでも話聞いてみるわ。」
京香「そうしてくれるぅ?あの子いないと店つぶれちゃうわ。」

 ドアを開けてゴルゴさんとジェイソンさんが入ってきた。京香ママと挨拶している。今までは見たこともなかった光景だ。ここにいるのは全員男なのだ。化粧の香りがする。エアコンを入れて間もない店は、ココナッツの香りが満ち始めていた。

ではまた。

→ 私オカマでした(13)

"私オカマでした(12)"へのコメントを書く

お名前:[必須入力]
メールアドレス:
ホームページアドレス:
コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。